村松事務所便り 2024年9月号(vol.248)

解雇等無効判決後、職場復帰する労働者はどのくらい?~労働政策研究・研修機構の調査から


労働問題を専門とする日本労働弁護団、経営法曹会議ほか、労働問題に詳しい弁護士を対象
に行われた調査の結果、次のようなことが明らかになったそうです。

◆解雇等無効判決後の復職割合
解雇・雇止め訴訟の判決において解雇等が無効とされた場合の復職割合は次のようになってい
ます。
・復職した 37.4%(うち復職後継続就業 30.3%、
復職後不本意退職 7.1%)
・復職せず 54.5%
・不明 8.1%
復職しなかった理由としては、復職後の人間関係に懸念があるとした人の割合が38.9%と最多でした。また、復職後に不本意退職となった労働者の退職理由では、「使用者からの嫌がらせ」(16.2%)が最多でした。

◆多くのケースで和解案拒絶
一方、判決で終局した事案で、判決までの過程で裁判所から示された和解案を拒絶したのは
86.5%に上っており、その内訳は次のようになっています。

・労働者側が拒絶 45.0%
・使用者側が拒絶 21.3%
・労使双方が拒絶 33.8%

労働者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、労働者が復職を希望」(34.7%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が低かった」(30.6%)、「合意退職の和解案だったが、解雇無効を確信」(22.3%)となっています。
また、使用者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」(19.4%)、「地位確認の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」(15.3%)、「合意退職の和解
案だったが、解決金額が高かった」(13.9%)となっています。


現在、厚生労働省の労働政策審議会では解雇無効時の金銭救済制度に関する議論が以前から行われていますが、少し停滞気味のようです。解雇・雇止めには金銭的な問題だけではないという一面もあり、なかなか結論は出ないようですが、今後の行方が気になるところですね。


【労働政策研究・研修機構「解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査」】

仕事より余暇を重視する割合が年々増加~日本生産性本部の調査より
◆「仕事より余暇を重視」する傾向
日本生産性本部が「レジャー白書2024」(速報版)を公表しました。これは、余暇活動に関する個
人の意識や参加実態に関するアンケート調査の結果をまとめたものです。この調査により、仕事よりも余暇を重視する人々の割合が年々増加していることが明らかになりました。特に「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」と回答した人の割合が2021年以降増加しており、2023年には回答者の34.1%がこのように答えています。
この傾向は、働き方やライフスタイルの変化を反映しています。コロナ禍を経て、多くの人々が自分の時間を大切にし、家族や友人との時間、趣味やリラクゼーションの時間をより重視するようになったといえるでしょう。
◆企業に求められる対応企業には、上記のような働く人の意識の変化に対応することが求められます。すなわち、従業員のワークライフバランスを尊重し、柔軟な働き方を推進することで、従業員の満足度や生産性の向上が期待できます。具体的には、以下のような取組みが考えられます。
① フレックスタイム制度の導入:従業員が自分のライフスタイルに合わせて働く時間を選べるようにする。
② リモートワークの推進:通勤時間を削減し、より効率的に仕事を進めることができる環境を整える。
③ 有給休暇や特別休暇の取得促進:従業員が積極的に休暇を取得できるような文化を醸成する。
このほかにも、余暇活動として人気の高い国内観光旅行に行きやすくなるような福利厚生の導入なども考えられます。制度の導入をご検討の際には、ぜひ弊所にご相談ください。

【公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2024(速報版)」】
就活中の学生の88%が「企業のSNSを見て入社意欲が増した」と回答~株式会社リソースクリエイションの調査からSNS採用マーケティング「エアリク」を運営する、株式会社リソースクリエイションは、2025年卒業予定の就職活動中の学生575名を対象に、「SNS就活についての実態調査」を実施しました。その概要を紹介します。
◆選考に進む上で最も重要視することは「会社の雰囲気」
「選考に進むうえで、何を最重要視するか」という質問に対し、63.3%が「会社の雰囲気」と回答しています。「企業理念」(11.0%)や「給与」(6.8%)と圧倒的な差がつきました。
◆企業のSNSアカウントは必要 「企業のSNSアカウントは必要だと思うか」という質問に対しては、89%が「必要」と回答しています。その理由として、・ホームページや文などでは伝わらない会社の雰囲気を知ることができるため

・SNSはより手軽に欲しい情報を入手することができるため
・社風が強く出るものであると考えているから
・企業理解が深まったり、オープンにしていることから、信頼感が周りに比べて高くなると感じる
ため
などがあげられています。

◆企業のSNSを見て入社意欲が増した学生は88%
「就職活動中、企業アカウントを見て入社意欲はどのように変化したか」という質問に対し、88%
が「増した」と回答しています。企業のありのままの雰囲気が伝わると親近感がわき、入社意欲が
高まる効果が期待できそうです。
◆就活生の約半数がSNSきっかけで企業選考を受けたことがある
「SNSがきっかけで企業の選考を受けたことがあるか」という質問に対しては、約半数(49%)が「ある」と回答しました。
学生にとって身近なSNSは、就職活動という場面でも当たり前に使用するものとなっています。企業が学生のアカウントを確認するように、企業もしっかり見られているのです。企業もSNS発信には本格的に力を入れる必要があるでしょう。【株式会社リソースクリエイション「SNS就活についての実態調査」】


当事務所よりひとこと
島根県・鳥取県の最低賃金引上げまであと1カ月あまり…。過去最大の上げ幅ですが、非
正規従業員向けで雇用保険被験者のみが対象となりますが、設備投資が不要な「キャリアアップ
助成金・賃金規定等改定コース」の案内をしています。