労働者死傷病報告の電子申請義務化について
労働者死傷病報告の報告事項が改正され、令和7年1月1日から、電子申請が義務化されるとともに、報告事項の整理がされます。
◆主な改正内容
労働者死傷病報告の報告事項について、災害発生状況をより的確に把握すること等を目的に、これまでの自由記載から、該当するコードからの選択に変更になります。
①「事業の種類」⇒日本標準産業分類から該当する細分類項目を選択
(例)製造業>食料品製造業>水産食料
品製造業>水産缶詰・瓶詰製造業
②「被災者の職種」⇒日本標準職業分類から該当する小分類項目を選択
(例)生産工程従事者>製品製造・加工
処理従事者(金属製品を除く)>食 料品製造従事者
③「傷病名及び傷病部位」⇒該当する傷病名及び傷病部位を選択
(例)傷病名:負傷>切断
傷病部位:頭部>鼻
また、「災害発生状況及び原因」の記入事項については、留意事項別に記入できるよう欄が5分割されました(1.どのような場所で、2.どのような作業をしているときに、3.どのような物又は環境に、4.どのような不安全な又は有害な状態があって、5.どのような災害が発生したか)。さらに、「略図(発生時の状況を図示すること。)」については、従前の手書きから、イラスト等の「略図」のデータを添付することになります(手書き等で作成後、携帯電話等で写真を撮ってそのデータを添付することも可)。
◆留意点
厚生労働省は、厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」の活用を推進していますが、電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告を認めるとしています。また、令和7年1月1日からは、次の報告についても電子申請が義務化されます。
総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告、定期健康診断結果報告、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告、有機溶剤等健康診断結果報告、じん肺健康管理実施状況報告
【厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」】
企業の7割がカスハラ対策未対応~東京商工リサーチ調査結果より
東京商工リサーチは、「企業のカスタマーハラスメント」に関する調査結果を公表しました。この調査は8月上旬にインターネットによるアンケートで実施し、5,748社から回答を得て集計されたものです。
◆約2割の企業がカスハラを経験
「貴社では直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことはありますか」という質問に対し、「ある」と回答した企業は19.1%(1,103社)でした。規模別では、資本金1億円以上の大企業の26.1%(567社中、148社)がカスハラを受けており、中小企業は18.4%(5,181社中、955社)でした。取引先や顧客が多い大企業のほうがクレームを受ける機会が多いことがわかります。
職種別では、宿泊業が72.0%(25社中、18社)で最も多く、次いで、飲食業、タクシーやバスなどの道路旅客運送業、サービス業、小売業が上位を占めています。
◆休職や退職が発生した企業も
「カスタマーハラスメントの内容はどのようなものでしたか」という質問に対し、「口調が攻撃的・威圧的だった」が73.1%(1,047社中、766社)で最も多く、次いで、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」、「大きな声を上げられた」、「一方的に話し続けられた」、「過度に謝罪を要求された」が続いています。
また、カスハラを受けたことがある企業のうち、13.5%(1,040社中、141社)がカスハラによって「休職や退職が発生した」と回答しています。
◆カスハラ対策の義務化検討
「カスタマーハラスメントについて、どのような対策を講じていますか」という質問に対し、71.5%(5,651社中、4,041社)が「特に対策は講じていない」と回答しています。一方、対策を講じている企業は、「従業員向けの研修」、「従業員向けの相談窓口の設置」、「カスタマーハラスメントの対応方針(に類するものを含む)の策定」などの対策に取り組んでいます。
政府は、企業へのカスハラ対策の義務化について、労働施策総合推進法の改正を検討しており、来年の通常国会に改正案を提出する予定です。企業は、従業員が安心して働ける職場環境をつくるためにカスハラ対策に取り組むことが必要となります。
【東京商工リサーチ「「企業のカスタマーハラスメント」に関するアンケート調査」】
リテンションと配置・異動管理の重要性
◆リテンションの意味と重要性
「リテンション」とは、企業が優秀な人材を維持・確保するために行う人事施策全般を指します。少子高齢化が進み、人手不足の企業が多いなか、既存の優秀な人材が自社に居続けてくれるための施策は、ますます重要になっています。
リテンションマネジメントは、単なる離職防止策ではなく、従業員の満足度や生産性を高め、企業の競争力を維持・向上させるための戦略的な取組みです。優秀な人材を維持することは、企業の成長に直結するため、企業の重要な課題となっています。
◆不本意な配置・異動がリテンションに与える影響
従業員の意思を無視した配置転換や、家庭事情等を考慮しない一方的な異動は、従業員の不満や不安を増大させ、企業への信頼を損なう恐れがあります。場合によっては退職ドミノにつながり、会社の存続を危うくする可能性もあります。
◆効果的な配置・異動管理の注意点
効果的な配置・異動管理を実施するためには、まず従業員の個々の適性やキャリアプランを尊重することが重要です。従業員の能力や経験、希望を十分に考慮し、適材適所の配置を心がけることが求められます。
また、配置や異動の基準や過程を明確にし、従業員との対話を重視することで、透明性と公平性を確保することができます。さらに、異動後の適応状況を定期的に確認し、必要に応じてサポートを提供することで、従業員が安心して新しい環境に馴染むことができます。従業員の安心感は近年の労務管理における重要事項です。
ただし、このような取組みを行うためには、その基礎として職場の良好な人間関係が必要です。また、異動の基準等を明確化し、多様化する働き方にも対応するために、社内ルール等の見直しが必要になってきているようです。
(最後までお読みいただき、ありがとうございます。)