村松事務所便り 2024年10月号(vol.249)

労働者死傷病報告の電子申請義務化について

 労働者死傷病報告の報告事項が改正され、令和7年1月1日から、電子申請が義務化されるとともに、報告事項の整理がされます。

◆主な改正内容

労働者死傷病報告の報告事項について、災害発生状況をより的確に把握すること等を目的に、これまでの自由記載から、該当するコードからの選択に変更になります。

①「事業の種類」⇒日本標準産業分類から該当する細分類項目を選択

(例)製造業>食料品製造業>水産食料

品製造業>水産缶詰・瓶詰製造業

②「被災者の職種」⇒日本標準職業分類から該当する小分類項目を選択

(例)生産工程従事者>製品製造・加工

処理従事者(金属製品を除く)>食 料品製造従事者

③「傷病名及び傷病部位」⇒該当する傷病名及び傷病部位を選択

(例)傷病名:負傷>切断

 傷病部位:頭部>鼻

 また、「災害発生状況及び原因」の記入事項については、留意事項別に記入できるよう欄が5分割されました(1.どのような場所で、2.どのような作業をしているときに、3.どのような物又は環境に、4.どのような不安全な又は有害な状態があって、5.どのような災害が発生したか)。さらに、「略図(発生時の状況を図示すること。)」については、従前の手書きから、イラスト等の「略図」のデータを添付することになります(手書き等で作成後、携帯電話等で写真を撮ってそのデータを添付することも可)。

◆留意点

厚生労働省は、厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」の活用を推進していますが、電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告を認めるとしています。また、令和7年1月1日からは、次の報告についても電子申請が義務化されます。

総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告、定期健康診断結果報告、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告、有機溶剤等健康診断結果報告、じん肺健康管理実施状況報告

【厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」】

企業の7割がカスハラ対策未対応~東京商工リサーチ調査結果より

東京商工リサーチは、「企業のカスタマーハラスメント」に関する調査結果を公表しました。この調査は8月上旬にインターネットによるアンケートで実施し、5,748社から回答を得て集計されたものです。

◆約2割の企業がカスハラを経験

「貴社では直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことはありますか」という質問に対し、「ある」と回答した企業は19.1%(1,103社)でした。規模別では、資本金1億円以上の大企業の26.1%(567社中、148社)がカスハラを受けており、中小企業は18.4%(5,181社中、955社)でした。取引先や顧客が多い大企業のほうがクレームを受ける機会が多いことがわかります。

職種別では、宿泊業が72.0%(25社中、18社)で最も多く、次いで、飲食業、タクシーやバスなどの道路旅客運送業、サービス業、小売業が上位を占めています。

◆休職や退職が発生した企業も

「カスタマーハラスメントの内容はどのようなものでしたか」という質問に対し、「口調が攻撃的・威圧的だった」が73.1%(1,047社中、766社)で最も多く、次いで、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」、「大きな声を上げられた」、「一方的に話し続けられた」、「過度に謝罪を要求された」が続いています。

また、カスハラを受けたことがある企業のうち、13.5%(1,040社中、141社)がカスハラによって「休職や退職が発生した」と回答しています。

◆カスハラ対策の義務化検討

「カスタマーハラスメントについて、どのような対策を講じていますか」という質問に対し、71.5%(5,651社中、4,041社)が「特に対策は講じていない」と回答しています。一方、対策を講じている企業は、「従業員向けの研修」、「従業員向けの相談窓口の設置」、「カスタマーハラスメントの対応方針(に類するものを含む)の策定」などの対策に取り組んでいます。

政府は、企業へのカスハラ対策の義務化について、労働施策総合推進法の改正を検討しており、来年の通常国会に改正案を提出する予定です。企業は、従業員が安心して働ける職場環境をつくるためにカスハラ対策に取り組むことが必要となります。

【東京商工リサーチ「「企業のカスタマーハラスメント」に関するアンケート調査」】

リテンションと配置・異動管理の重要性

◆リテンションの意味と重要性

「リテンション」とは、企業が優秀な人材を維持・確保するために行う人事施策全般を指します。少子高齢化が進み、人手不足の企業が多いなか、既存の優秀な人材が自社に居続けてくれるための施策は、ますます重要になっています。

リテンションマネジメントは、単なる離職防止策ではなく、従業員の満足度や生産性を高め、企業の競争力を維持・向上させるための戦略的な取組みです。優秀な人材を維持することは、企業の成長に直結するため、企業の重要な課題となっています。

◆不本意な配置・異動がリテンションに与える影響

従業員の意思を無視した配置転換や、家庭事情等を考慮しない一方的な異動は、従業員の不満や不安を増大させ、企業への信頼を損なう恐れがあります。場合によっては退職ドミノにつながり、会社の存続を危うくする可能性もあります。

◆効果的な配置・異動管理の注意点

効果的な配置・異動管理を実施するためには、まず従業員の個々の適性やキャリアプランを尊重することが重要です。従業員の能力や経験、希望を十分に考慮し、適材適所の配置を心がけることが求められます。

また、配置や異動の基準や過程を明確にし、従業員との対話を重視することで、透明性と公平性を確保することができます。さらに、異動後の適応状況を定期的に確認し、必要に応じてサポートを提供することで、従業員が安心して新しい環境に馴染むことができます。従業員の安心感は近年の労務管理における重要事項です。

ただし、このような取組みを行うためには、その基礎として職場の良好な人間関係が必要です。また、異動の基準等を明確化し、多様化する働き方にも対応するために、社内ルール等の見直しが必要になってきているようです。        

(最後までお読みいただき、ありがとうございます。)

村松事務所便り 2024年9月号(vol.248)

解雇等無効判決後、職場復帰する労働者はどのくらい?~労働政策研究・研修機構の調査から


労働問題を専門とする日本労働弁護団、経営法曹会議ほか、労働問題に詳しい弁護士を対象
に行われた調査の結果、次のようなことが明らかになったそうです。

◆解雇等無効判決後の復職割合
解雇・雇止め訴訟の判決において解雇等が無効とされた場合の復職割合は次のようになってい
ます。
・復職した 37.4%(うち復職後継続就業 30.3%、
復職後不本意退職 7.1%)
・復職せず 54.5%
・不明 8.1%
復職しなかった理由としては、復職後の人間関係に懸念があるとした人の割合が38.9%と最多でした。また、復職後に不本意退職となった労働者の退職理由では、「使用者からの嫌がらせ」(16.2%)が最多でした。

◆多くのケースで和解案拒絶
一方、判決で終局した事案で、判決までの過程で裁判所から示された和解案を拒絶したのは
86.5%に上っており、その内訳は次のようになっています。

・労働者側が拒絶 45.0%
・使用者側が拒絶 21.3%
・労使双方が拒絶 33.8%

労働者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、労働者が復職を希望」(34.7%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が低かった」(30.6%)、「合意退職の和解案だったが、解雇無効を確信」(22.3%)となっています。
また、使用者側の拒絶理由は、「合意退職の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」(19.4%)、「地位確認の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」(15.3%)、「合意退職の和解
案だったが、解決金額が高かった」(13.9%)となっています。


現在、厚生労働省の労働政策審議会では解雇無効時の金銭救済制度に関する議論が以前から行われていますが、少し停滞気味のようです。解雇・雇止めには金銭的な問題だけではないという一面もあり、なかなか結論は出ないようですが、今後の行方が気になるところですね。


【労働政策研究・研修機構「解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査」】

仕事より余暇を重視する割合が年々増加~日本生産性本部の調査より
◆「仕事より余暇を重視」する傾向
日本生産性本部が「レジャー白書2024」(速報版)を公表しました。これは、余暇活動に関する個
人の意識や参加実態に関するアンケート調査の結果をまとめたものです。この調査により、仕事よりも余暇を重視する人々の割合が年々増加していることが明らかになりました。特に「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」と回答した人の割合が2021年以降増加しており、2023年には回答者の34.1%がこのように答えています。
この傾向は、働き方やライフスタイルの変化を反映しています。コロナ禍を経て、多くの人々が自分の時間を大切にし、家族や友人との時間、趣味やリラクゼーションの時間をより重視するようになったといえるでしょう。
◆企業に求められる対応企業には、上記のような働く人の意識の変化に対応することが求められます。すなわち、従業員のワークライフバランスを尊重し、柔軟な働き方を推進することで、従業員の満足度や生産性の向上が期待できます。具体的には、以下のような取組みが考えられます。
① フレックスタイム制度の導入:従業員が自分のライフスタイルに合わせて働く時間を選べるようにする。
② リモートワークの推進:通勤時間を削減し、より効率的に仕事を進めることができる環境を整える。
③ 有給休暇や特別休暇の取得促進:従業員が積極的に休暇を取得できるような文化を醸成する。
このほかにも、余暇活動として人気の高い国内観光旅行に行きやすくなるような福利厚生の導入なども考えられます。制度の導入をご検討の際には、ぜひ弊所にご相談ください。

【公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2024(速報版)」】
就活中の学生の88%が「企業のSNSを見て入社意欲が増した」と回答~株式会社リソースクリエイションの調査からSNS採用マーケティング「エアリク」を運営する、株式会社リソースクリエイションは、2025年卒業予定の就職活動中の学生575名を対象に、「SNS就活についての実態調査」を実施しました。その概要を紹介します。
◆選考に進む上で最も重要視することは「会社の雰囲気」
「選考に進むうえで、何を最重要視するか」という質問に対し、63.3%が「会社の雰囲気」と回答しています。「企業理念」(11.0%)や「給与」(6.8%)と圧倒的な差がつきました。
◆企業のSNSアカウントは必要 「企業のSNSアカウントは必要だと思うか」という質問に対しては、89%が「必要」と回答しています。その理由として、・ホームページや文などでは伝わらない会社の雰囲気を知ることができるため

・SNSはより手軽に欲しい情報を入手することができるため
・社風が強く出るものであると考えているから
・企業理解が深まったり、オープンにしていることから、信頼感が周りに比べて高くなると感じる
ため
などがあげられています。

◆企業のSNSを見て入社意欲が増した学生は88%
「就職活動中、企業アカウントを見て入社意欲はどのように変化したか」という質問に対し、88%
が「増した」と回答しています。企業のありのままの雰囲気が伝わると親近感がわき、入社意欲が
高まる効果が期待できそうです。
◆就活生の約半数がSNSきっかけで企業選考を受けたことがある
「SNSがきっかけで企業の選考を受けたことがあるか」という質問に対しては、約半数(49%)が「ある」と回答しました。
学生にとって身近なSNSは、就職活動という場面でも当たり前に使用するものとなっています。企業が学生のアカウントを確認するように、企業もしっかり見られているのです。企業もSNS発信には本格的に力を入れる必要があるでしょう。【株式会社リソースクリエイション「SNS就活についての実態調査」】


当事務所よりひとこと
島根県・鳥取県の最低賃金引上げまであと1カ月あまり…。過去最大の上げ幅ですが、非
正規従業員向けで雇用保険被験者のみが対象となりますが、設備投資が不要な「キャリアアップ
助成金・賃金規定等改定コース」の案内をしています。

健康セミナーを開催しました


アクサ生命松江営業所の金尾所長を講師に迎えて健康セミナーを開催しました。

当事務所の健康課題である、女性の健康、喫煙、運動をテーマに全社員が参加しました。

健康に対する知識意識を深める良い機会になりました。

SHIMANE SOCCER FESTIVAL 2024に協賛しました

長谷川アーリアジャスール選手(ガイナーレ鳥取所属)の考えに賛同し、SHIMANE SOCCER FESTIVAL 2024~ ARIA FOOTBALL PARK IN MATSUE ~に協賛させていただきました。

プロ選手と触れ合う機会が少ない島根県の子供たちにサッカーの楽しさを広めるというイベントです。
当日は子供たちの笑顔があふれる、とても素晴らしいイベントでした。

健康経営優良法人2024に認定されました

この度、社会保険労務士村松事務所は経済産業省と日本健康会議が認定を行う「健康経営優良法人認定制度」において、「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定されました。
今後も当事務所の理念「企業と労働者と世間の三方よし」のもと、健康経営に取り組んでまいります。

社会保険労務士法人村松事務所の健康経営について