村松事務所便り 2025年3月号(vol.254)

2026年度高卒人材採用に関する確認ポイント


◆採用スケジュール
 2026年3月新規高等学校卒業者の選考日程は、下記のとおりです。
 
 ・ハローワークによる受付開始:6月1日
 ・学校への求人申込みおよび学校訪問開始:7月1日
 ・生徒の応募書類提出開始:9月5日(沖縄県は8月30日)
 ・就職試験(選考開始)および内定開始:9月16日

 高卒人材の募集は、ハローワークで求人受付をした上で高校への求人申込みをするなど、大学新卒者や中途採用と異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。


◆応募書類に変更あり
 厚生労働省の履歴書様式例から性別欄が削除されたこと等を踏まえ、全国高等学校統一応募用紙が、2026年度より見直されます。履歴書と調査書とで、それぞれ次のような変更点あり。


◆履歴書の変更点
1「性別欄」を削除
2「学歴・職歴欄」を「在籍校欄」と「職歴欄」に変更
3「趣味・特技欄」を削除
4「志望の動機欄」を「志望の動機・アピールポイント欄」に変更
 「志望の動機欄」には「志望の動機、自己PR、特技等を記入すること」、また「備考欄」には資格や校内外の諸活動、志望の動機・アピールポイント等「以外で記入したい事項がある場合に記入すること」とされています。


◆調査書の変更点
1「総合的な学習の時間」を「総合的な探究(学習)の時間」に変更
2「身体状況欄」を削除
3「本人の長所・推薦事由欄」を「本人のアピールポイント・推薦事由等欄」に変更
4「特記事項欄」を追加
5 押印を削除
「特記事項欄」は、「休学の期間がある場合」「職業の特性等において必要な要件として、身体状況(視力及び聴力など)及び配慮事項の記載が求められる場合」などに記入すること、とされています。
【厚生労働省「令和8年3月新規高等学校卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめました」】



従業員の不祥事発覚時の初動対応


◆初動対応の基本
 従業員による不祥事が発覚した場合、企業がその対応を誤ると、社内外からの信用を大きく損ねてしまう可能性があります。被害を最小限とするために、基本的な対応策を押さえておきましょう。

①担当者を選任し、事実関係を把握
 まずは事実関係を迅速に把握することが重要です。担当者を選任し、調査に当たります。関係者へのヒアリングや関連資料の確認を通じて、正確な情報を収集しましょう。その際、誰が、どのように調査を行うのかには慎重な判断が必要です。専門家に相談することも視野に入れておきましょう。社外からの問合せが想定される状況であれば、対応方針を決めておくのも重要です。

②情報開示とコミュニケーション
 不祥事の事実が確認されたら、速やかに情報開示を行います。被害者、株主や取引先、従業員などに対して、誠実かつ透明性のあるコミュニケーションを図ることが信頼回復の第一歩です。確かな事実に基づき、冷静かつ真摯に対応を行います。情報開示の範囲は事案によって異なりますが、社会的影響や被害者保護、再発防止の観点から判断していきます。

③被害者対応
 不祥事によって被害を受けた方々への対応も重要です。被害者の立場に立ち、誠実に謝罪し、適切な補償を行うことで、企業の責任を果たします。信頼を取り戻すためには、迅速かつ誠実な対応が不可欠です。


◆再発防止に取り組む
 初動対応のあとは、原因を徹底調査し、内部統制の強化や従業員教育など、再発防止に取り組むことが重要です。従業員の不祥事など考えたくないことかもしれません。ですが、誤った対応をしないよう、準備をしておくことが大切です。


出所者を雇う協力雇用主に対する支援制度


◆協力雇用主とは?
 刑務所や少年院の出所者、保護観察者などを雇用し、または雇用しようとする意思があるとして保護観察所に登録した民間事業主のことです。協力雇用主は、就労機会の提供だけでなく、社会生活の指導や助言をする役割も担います。全国で約2万5,000社が登録していますが、実際に雇用している会社は4%ほどです。
 協力雇用主になるためには、保護観察所(国)に登録する必要がありますので、まずは事業所の所在地を管轄する保護観察所に連絡します。その際、協力雇用主から暴力団を排除するため、役員等名簿、登記事項証明書等の提供が求められます。


◆協力雇用主が出所者を雇うまでの流れ
①保護観察所に登録して協力雇用主になる
②ハローワークに求人をかける(制度上、保護観察所からは出所者の紹介はないため)
③ハローワークに応募した出所者を雇用する


◆協力雇用主に対する支援制度

①保護観察所による相談支援
 本人への接し方や配慮すべき事項等については、保護観察所が相談に乗ってくれます。具体的には、心理学・教育学・社会学等の専門的知識をもつ国家公務員である保護観察官や地域性・民間性をもつボランティアである保護司から助言等を受けることができます。

②協力雇用主に対する刑務所出所者等就労奨励金
 実際に雇用し、就労継続に必要な生活指導や助言などを行う協力雇用主に対し、年間最大72万円の奨励金が支払われます。
 条件として、労災保険・雇用保険の加入手続を行っていることなど、一定の要件を満たす必要があります。また、協力雇用主は、就労継続のための指導等(挨拶や言葉遣いの重要性を説き、具体例を用いて人への接し方について助言を行うなど)と、指導等内容の報告が求められます。

③公共工事等の競争入札における優遇制度
 地方自治体の間で公共工事等の競争入札における協力雇用主に対する優遇制度の導入が広がっており、その場合、優遇を受けられることがあります。【法務省「協力雇用主」】

村松事務所便り 2025年2月号(vol.253)

SNS等に労働者の募集に関する情報を載せる際の注意点


◆労働者の募集広告には、募集主の氏名等の表示が必要
 職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています(第5条の4)。
 昨今、インターネットで犯罪実行者の募集が行われる事案(闇バイト)が見られ、その中には、通常の労働者募集と誤解を生じさせるような広告等も見受けられることから、厚生労働省は、SNS等を通じて直接労働者を募集する際には、①募集主の氏名(または名称)、②住所、③連絡先(電話番号等)、④業務内容、⑤就業場所、⑥賃金の6情報は必ず表示するよう、事業者に呼びかけています。

○「住所(所在地)」はどこまで記載すればよいか?
 ビル名、階数、部屋番号まで記載する必要があります。

○「連絡先」として何を記載すればよいか?
 電話番号、メールアドレスまたは、自社ウェブサイト上に備え付けられた専用の問合せフォ        ームへのリンクのいずれかを記載する必要があります。

○氏名等の情報自体を記載せず、氏名等の情報が記載されている会社ウェブサイトの募集要項等のリンクを記載することでも問題ないか?
 会社ウェブサイトの募集要項等のリンクのみでは、そもそも求人であるかどうかも含め、誤解を招く可能性があるため、募集情報を提供する広告等自体に上記6情報を記載する必要があります。

○業務内容、就業場所および賃金については、職業安定法第5条の3や労働基準法第15条で求められるのと同じように詳細を記載する必要があるか?
 必ずしも同じである必要はないが、求職者が誤解を生じないよう、業務内容や就業場所、賃金について記載する必要があるとしています。例えば、就業場所について、「就業場所の変更の範囲」は記載せず「雇入れ直後の就業場所」のみを示す形や、複数の候補を示し、「応相談」とする形、賃金について、「時給1,500円~」とする形でも、記載があれば、直ちに職業安定法第5条の4違反とはならないと考えられるとしています。
【厚生労働省「労働者の募集広告には、「募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金」の表示が必要です」】


外国人の雇用実態に関する初の調査結果から


◆外国人雇用実態調査とは
 厚生労働省は、「令和5年外国人雇用実態調査」の結果を公表しました。この調査は、外国人労働者を雇用する事業所における外国人労働者の雇用形態、賃金等の雇用管理の状況および当該事業所の外国人労働者の状況、入職経路、前職に関する事項等について明らかにすることを目的として、初めて実施されました。
 同調査は、雇用保険被保険者5人以上かつ外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所および当該事業所に雇用されている外国人常用労働者が対象で、抽出された9,450事業所のうち有効回答を得た3,534事業所および1万1,629人について集計しています。調査結果のポイントは以下の通りです。


◆事業所に対する調査
 外国人労働者数(雇用保険被保険者数5人以上事業所)は約160万人で、在留資格別にみると、「専門的・技術的分野」が35.6%、「身分に基づくもの」が30.9%、「技能実習」が22.8%となっています。
 一般労働者が毎月きまって現金で支給される給与額(超過勤務手当を含む)は26万7,700円で、1か月の総時間(所定内実労働時間)は155.8時間、超過実労働時間は19.8時間となっています。
外国人労働者を雇用する理由は、「労働力不足の解消・緩和のため」が64.8%と最も高く、次いで「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」が56.8%、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」が18.5%、「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」が16.5%となっています。


◆労働者に対する調査
 外国人労働者の国籍・地域をみると、ベトナムが 29.8%と最も多く、次いで中国(香港、マカオ含む)が 15.9%、フィリピンが 10.0%となっています。
 就労上のトラブルや困ったことについては、「なし」が82.5%、「あり」が14.4%と回答しています。「あり」と回答した人の内容(複数回答)をみると、「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」が19.6%、「トラブルや困ったことの相談先がわからなかった」が16.0%、「事前の説明以上に高い日本語能力が求められた」が13.6%、「その他」が34.5%となっています。
 今後、外国人の雇用を検討する際の参考としてください。【厚生労働省「令和5年外国人雇用実態調査の概況」】


障害者の雇用状況と法定雇用率引上げ
~厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」等より

 厚生労働省は令和6年12月20日、令和6年の「障害者雇用状況」集計結果を公表しました。障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率。民間企業においては2.5%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。


◆民間企業における雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新
 民間企業(常用労働者数が40.0人以上の企業:法定雇用率2.5%)に雇用されている障害者の数は67万7,461.5人(3万5,283.5人増、対前年比5.5%増)、実雇用率2.41%(対前年比0.08ポイント上昇)で、雇用障害者数、実雇用率いずれも過去最高を更新しています。一方で、法定雇用率達成企業の割合は46.0%(対前年比4.1ポイント低下)となっています。


◆雇用者の内訳では、精神障害者の雇用増加の伸び率が大きい
 雇用者のうち、身体障害者は36万8,949.0人(対前年比2.4%増)、知的障害者は15万7,795.5人(同4.0%増)、精神障害者は15万717.0人(同15.7%増)と、いずれも前年より増加しています。特に精神障害者の伸び率が大きくなっています。


◆法定雇用率未達成企業の状況
 法定雇用率の未達成企業は6万3,364社で、そのうち、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、64.1%と過半数を占めています。また、障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は3万6,485社であり、未達成企業に占める割合は、57.6%となっています。
 法定雇用率は、令和8年度に2.7%へと段階的に引き上げられます。企業は継続して障害者雇用の推進に取り組む必要があります。【厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」】

村松事務所便り 2025年1月号(vol.252)

価格交渉促進月間(2024年9月)のフォローアップ調査結果~中小企業庁

 原材料費やエネルギー価格、労務費などが上昇する中、多くの中小企業が価格交渉・価格転嫁できる環境を整備するため、中小企業庁では2021年9月より、毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、受注企業が発注企業にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。
 2024年11月29日に公表された同年9月のフォローアップ調査の結果では、価格転嫁に関する発注側企業による説明状況や、サプライチェーンの各段階における価格転嫁の状況、官公需における価格交渉・価格転嫁の状況についても初めて調査が行われました。



◆価格交渉の状況

 直近6か月間における価格交渉の状況は、「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回から約2ポイント増の28.3%、「価格交渉が行われた」割合も前回から約1ポイント増の86.4%でした。
 発注企業からの申し入れは浸透しつつあるものの、受注企業の意に反して「交渉が行われなかった」割合が約1.5割あり、引き続き、労務費指針の徹底等による価格交渉・転嫁への機運醸成が必要です。


◆価格転嫁の状況

 コスト全体の価格転嫁率は49.7%で、今年3月より約3ポイント増加しています。「全額価格転嫁できた」割合は、前回から約3ポイント増の25.5%、「一部でも価格転嫁できた」割合も前回から約3ポイント増の79.9%と、増加しました。
 価格転嫁の状況は改善してはいますが、「転嫁できた企業」と「できない企業」で二極化がみられ、転嫁対策の徹底が重要です。


◆価格転嫁に関する発注側企業による説明

 今回調査では、価格転嫁に関する発注側企業による説明を初めて調査しました。価格交渉が行われたものの、コスト上昇分の全額の価格転嫁には至らなかった企業(全体の37.8%)のうち、発注側企業から価格転嫁について、「納得できる説明があった」と回答した企業は約6割ありました。一方で、「発注側企業から説明はあったものの、納得できるものではなかった」または「発注側企業からの説明はなかった」とする回答が約4割となっています。
 発注側企業に対し、価格交渉の場の設定のみならず、価格に関する受注側企業への十分な説明も求めていく必要があります。【中小企業庁「価格交渉促進月間(2024年9月)フォローアップ調査結果」】
https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241129001/20241129001-1.pdf



ハローワークにおける求人不受理の対象が追加されます


◆ハローワークにおける求人不受理の対象とは?

 ハローワークの求人は、労働関係法令の規定に違反し、企業名公表等の措置が講じられた者からの求人の申込みについては受理しないことができると、職業安定法の政令に規定されています。
 例えば、労働基準法や最低賃金法の規定に、過去1年間に2回以上、同一条項違反で是正指導を受けた場合は是正後6カ月経過まで不受理となります。送検・公表された場合は、送検後概ね1年経過まで不受理となります。また、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の規定に違反し、是正を求める勧告等に従わずに公表された場合も是正後6カ月経過まで不受理となります。


◆改正育児・介護休業法の施行にあわせて求人不受理の対象が追加

 2024年の通常国会で成立した改正育児・介護休業法は、一部が2025年4月1日と2025年10月1日の2回に分けて施行されます。この改正法の施行にあわせて、求人不受理の対象が追加されます。
 具体的には、労働者が家族の介護の必要性に直面した旨を事業主に対して申し出たことを理由とした不利益取扱いの禁止への違反が、2025年4月1日から追加されます。
 また、(1)労働者から確認された就業に関する条件に係る意向の内容を理由とした不利益取扱いの禁止、(2)柔軟な働き方を実現するための措置(3歳から小学校就学までの子を養育する労働者に対する始業時刻等の変更等の措置)の実施義務、(3)事業主が講じた柔軟な働き方を実現するための措置に係る申出をしたこと等を理由とした不利益取扱いの禁止を定めた規定への違反について、2025年10月1日から追加されます。【厚生労働省「第376回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料」】https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45125.html



外国人技能実習生の転籍要件が明確化されました


◆技能実習の運用要領を改正

 出入国在留管理庁が、外国人技能実習の運用要領を改正し、転籍を可能とする場合の要件に、「ハラスメントを受けている場合」が明記されました。技能実習生の失踪の増加や、外国人労働者に対する人権侵害に対する批判が国際的にも高まっていることを受けた対応だと思われます。
 技能実習生は原則3年間転籍ができませんが、「やむを得ない事情」があったときは、受入企業を変更する転籍が認めています。
 これまで、この「やむを得ない事情」にどのような場合が該当するのか定義があいまいでしたが、暴行や各種ハラスメント(暴言、脅迫・強要、セクハラ、マタハラ、パワハラなど)を受けている場合、重大悪質な法令違反・契約違反があった場合に転籍できることが明確化されるとともに、直接被害を受けた技能実習生だけでなく、同僚の技能実習生についても対象となりました。
 技能実習であるからといって、ハラスメントや賃金不払いなどの法違反が許されないことが明確にされた形です。また、転籍を申し出るための専用様式も作成されたそうですので、今後は転籍の申出がなされやすい状況となったようです。


◆技能実習制度は「育成就労制度」へ

 労働基準法違反・法定労働時間を超えた労働、労働安全法違反、労災隠し、賃金未払い、実習計画に基づかない実習などは、認定の取り消しや是正指導、送検等につながります。
 技能実習制度はあらたに「育成就労制度」への見直しが行われます。新たな制度は2027年の開始が見込まれますので、今後の動向に注意しておきましょう。【「技能実習制度における「やむを得ない事情」がある場合の転籍の改善について」】https://www.moj.go.jp/isa/applications/titp/10_00216.html



当事務所よりひと言
 今年の十二支はヘビ。脱皮を繰り返して成長するため、永遠や生命、再生の象徴とされています。事業運営も同じく成長していきたいものです。

村松事務所便り 2024年12月号(vol.251)

立ち作業の負担軽減対策


◆立ち作業による体への負担
 工場のライン作業や、工事現場における交通誘導作業、スーパーの会計作業など様々な場面で見られる「立ち作業」は、業務に集中しやすい、とっさに動きやすいといったメリットがある一方で、長時間持続的に行われると足腰等への負担が大きくなり、作業効率も落ちるといったデメリットもあります。従業員の負担を軽減するために、事業者として何ができるか、見てみましょう。

◆労働安全衛生規則の規定
 まず、労働安全衛生規則615条では、就業中にしばしば座ることのできる機会のあるときには椅子の備え付けを事業者に義務付けています。
 「(立業のためのいす)第615条 事業者は、持続的立業に従事する労働者が就業中しばしばすわることのできる機会のあるときは、当該労働者が利用することのできるいすを備えなければならない。」
 必ずしも座って作業をすることを求めているものではありませんが、立ち作業にともなう従業員の足腰の負担を軽減するためには、作業時間の短縮やこまめな休憩の取得等を行うことや、作業中に座ることができるイスを設置するなどの対策が考えられます。

◆企業の取組事例
 厚生労働省のホームページに、小売業、警備業、その他事業と産業ごとに各企業での「立ち作業の負担軽減対策の取組事例紹介」がされています。

【事例1】スーパーマーケットのレジ作業
 軽く腰を掛けられるイスを設置し、接客の合間などに座っての待機を可能にした。レジの足元にクッション性のあるマットを設置。 レジ以外には、可動式の陳列棚の導入により、品出しの作業効率を上げるとともに、中腰姿勢の時間を削減。

【事例2】警備業
 座ることで、疲労・ストレスの軽減、心拍数・血圧などの上昇の抑制、身体的な負担が軽減されるとの研究結果をもとに、座哨しての警備を実践。座哨警備を行う際には、事前に現場の責任者と話し合い、作業場所と警備の位置関係や交通量を確認、安全第一で実施。
 その他、高さのないパンプスやスニーカーでの勤務を可能にすることで、立ち作業における足腰の負担軽減対策をしている例もあるようです。いずれの事例でも費用の目安は数万円でした。 
【厚生労働省「立ち作業の負担軽減対策の取組事例紹介」】→サイトがありますので、ご覧ください。

新法施行前のフリーランス取引状況
~公正取引委員会・厚生労働省の 実態調査結果と必要な対応(厚労省関係)

 フリーランスとして働く人々が安心して働ける環境を整備する目的で、11月1日に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス法」)が施行されました。これを踏まえ、公正取引委員会と厚生労働省は共同で、新法施行前のフリーランス取引の実態を把握するために、様々な業界のフリーランス労働者と委託者を対象に、取引条件や契約内容、報酬の支払い状況などの実態調査を行いました。

◆調査結果の概要と必要な対応(=厚労省関係の育児介護等と業務の両立配慮とハラスメント対策の整備)

○フリーランス法の認知度
 新法の内容をよく知らないと回答した委託者は54.5%、フリーランスは76.3%と、双方ともに認知度が低い結果が出ています。業種でみると、建設業と医療、福祉での認知度の低さが目立ちます。

○取引条件の明示
 取引条件を明示しなかったことがある割合として、委託者は17.4%、フリーランスは44.6%と回答しており、いずれも建設業において多くみられます。

○買いたたき
 報酬の額について十分な協議がなされていない割合として、委託者22.2%、フリーランス67.1%と大きく差がついており、フリーランスの不満の声が多く寄せられています。

○募集情報の表示
 業務委託の募集広告内容と実際の業務内容に違いがあったとする割合は、委託者で2.6%、フリーランス53.1%と差が大きく、特に生活関連サービス業や娯楽業でフリーランスにとって掲載内容の誤りや誤解を生じさせる表示であったとの意見が多くありました。

○育児介護等と業務の両立配慮
 妊娠・出産・育児・介護の事情に関して、業務との両立のため、委託者に配慮を求めたいフリーランスは70.7%に上ります。それに対し、応じていないと回答した委託者は0%で、フリーランスは6.8%が対応してもらえなかったと回答。
<育児介護等への配慮:6か月以上の業務委託については配慮義務があり、6か月未満の業務委託は配慮するように努める。>

(事例)
 特定受託事業者(フリーランス)が、育児介護等の配慮に関すること(「①子の急病で入院したため、納期を延期してほしい。」「②介護のためオンラインでの業務に変更したい。」を、特定業務委託事業者(委託元)へ申し出る。

(実際の対応方法)
 特定業務委託事業者(委託元)は、申出の内容等を把握し、取り得る選択肢を検討する。

(実際の対応事例)
①実施できる場合:納期を変更します。
 ⇒配慮の内容の伝達・実施
②やむを得ず実施できない場合:今回は作業が必要なので、オンラインへの変更は難しい。
 ⇒配慮不実施の伝達・理由説明
※申出があったとき、対応を講じることが必要で、検討した結果、上記のとおり、実際に配慮することができないことは法違反ではない。

○ハラスメント対策の整備
フリーランスへのハラスメント対策が整備・社内通知されていない委託者は51%と、体制整備の遅れが目立ちます。

(実際の対応方法)
 特定業務委託事業者(委託元)が講ずべき措置(以下の主要3つ)として、自社の“職場のハラスメント対策”と同様に考える。また、相談者や行為者などのプライバシー保護と自社の従業員やフリーランスの方へ不利益な取扱いをしない旨を周知・啓発する必要があります。
(1)ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(相談窓口の設置など)
(3)業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

 以上、法施行前のフリーランスの労働環境は、生活が不安定になるリスクが多く、不満が募る状態となっていたことがわかります。新法の施行により、これらの問題が改善されることが期待されます。

村松事務所便り 2024年11月号(vol.250)

労働者不足の対処方法 ~厚生労働省の調査より

 厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年8月)の概況」(※)が公表されており、調査項目の1つとして、「労働者不足の対処方法に関する事項」が盛り込まれています。人手不足に悩む事業者(同調査では労働者が不足している事業所の割合は 80%に上る)にとっても参考になるものと思われます。(※)令和6年8月1日現在の状況について、令和6年8月1日~8月7日に調査。

◆労働者不足の対処方法

 過去1年間(令和5年8月~令和6年7月)に行った労働者不足への対処方法について、割合の大きかったものから順から見てみます。また、今後1年間(令和6年8月~令和7年7月)についての結果も見てみましょう。(いずれも複数回答)

【1位】「正社員等採用・正社員以外から正社員への登用の増加」(過去1年間 59%、今後1年間60%)。

【2位】「在職者の労働条件の改善(賃金)」(過去1年間55%、今後1年間48%)。

【3位】「臨時、パートタイムの増加」(過去1年間40%、今後1年間41%)

【4位】「派遣労働者の活用」(過去1年間38%、今後1年間35%)

【5位】「求人条件の緩和」(過去1年間 36%、今後1年間34%)
 求人条件の緩和内容としては、賃金、労働時間、休暇、学歴、必要資格・経験等の緩和が挙げられています。

【6位】「離転職の防止策の強化、又は再雇用制度、定年延長、継続雇用」(過去1年間34%、今後1年間36%)
 離転職の防止策としては、労務管理(労働条件以外の福利厚生、労使関係など)の改善や教育訓練の実施などが挙げられています。再雇用制度には定年退職者だけでなく、子育てのためにいったん退職した女性などを再雇用する仕組みも含まれています。

【7位】「在職者の労働条件の改善(賃金以外)」(過去1年間31%、今後1年間31%)
 在職者の労働条件の改善内容としては、休暇の取得促進、所定労働時間の削減、育児支援や復帰支援制度の充実などが挙げられています。

【8位】「配置転換・出向者の受入れ」(過去1年間25%、今後1年間24%)

【9位】「省力化投資による生産性の向上・外注化・下請化等」(過去1年間 16%、今後1年間19%)

【詳細は、厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年8月)の概況」のサイトをご覧下さい。】

転職理由の真相と企業の対応策


◆「給与の低さ」が若年層の転職理由トップに
 厚生労働省の「若年者雇用実態調査」(令和5年)によると、若年労働者(満15~34歳の労働者)の前職の離職理由として最も多かったのは「給与の低さ」で 59.9%でした。特に 20~24 歳の年齢層では男性 64.6%、女性60.3%と高く、若年層の転職動機における給与の重要性が浮き彫りになっています。

◆「やりがい」と「スキルアップ」も重要な転職要因
 一方で、「仕事の内容が自分に合わない」(41.9%)や「自分の技能や能力を活かしたい」「責任のある仕事を任されたい」(33.8%)といったキャリアアップ・スキルアップでの理由も上位に来ています。これは、若年労働者が単に給与だけでなく、仕事の質や自己成長の機会も重視していることを示しています。
 企業側としては、給与水準の適正化だけでなく、従業員のキャリア開発やスキルアップの機会を提供することが、人材確保と定着率向上につながると言えるでしょう。また、入社時のミスマッチを防ぐために、採用プロセスでの職務内容の明確な説明や、入社後のフォローアップ体制の強化も重要です。
 いわゆる「ゆるブラックだ」、「自分が成長できない」ということでの人材流出につながらないよう、効果的な施策を考えていきたいですね。給与制度の設計から人材育成プログラムの構築、さらには採用戦略の立案など、これらの課題に対応するには、専門的な知識と経験が必要です。企業の競争力を高めるため、見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
【詳細は、厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」のサイトをご覧ください。】

11 月1日から自転車の危険運転に罰則が科されます


◆道路交通法の改正
令和6年11月1日より、自転車の「運転中のながらスマホ」と「酒気帯び運転および幇助」に対して、新しく罰則が適用されます。

◆運転中のながらスマホ
自転車に乗りながら、スマートフォン等を手で保持して通話したり、画面を注視したりする行為が新たに禁止され、罰則の対象になります。
・違反者は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
・交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金

◆酒気帯び運転および幇助
酒気帯び運転のほか、酒類の提供や同乗・自転車の提供に対して新たに罰則が適用されます。
・違反者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金
・自転車の提供者は、3年以下の懲役または50 万円以下の罰金
・酒類の提供者・同乗者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金

◆自転車運転者講習制度
上記は、「自転車運転者講習制度」の対象となります。また、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の自転車運転の危険行為(信号無視や指定場所一時不停止、通行区分違反や安全運転義務違反等)を反復して行った者も講習制度の対象となります。
*受講命令違反は、5万円以下の罰金免許なしで誰でも乗れる自転車だからこそ、従業員が通勤や業務で自転車を使用する場合、十分に注意するよう喚起しましょう。
【警察庁「自転車の危険な運転に新しく罰則が整備されました」のサイトをご覧下さい】


当事務所よりひと言
今号(250号)の「村松事務所便り」から、今まで“紙”で郵送していた形を、郵送料の値上げに伴いまして、請求書等と一緒に電子化をしまして、送信する形といたしました。
併せて、弊事務所のウェブサイトもできました。今後も、情報発信をして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

村松事務所便り 2024年10月号(vol.249)

労働者死傷病報告の電子申請義務化について

 労働者死傷病報告の報告事項が改正され、令和7年1月1日から、電子申請が義務化されるとともに、報告事項の整理がされます。

◆主な改正内容

労働者死傷病報告の報告事項について、災害発生状況をより的確に把握すること等を目的に、これまでの自由記載から、該当するコードからの選択に変更になります。

①「事業の種類」⇒日本標準産業分類から該当する細分類項目を選択

(例)製造業>食料品製造業>水産食料

品製造業>水産缶詰・瓶詰製造業

②「被災者の職種」⇒日本標準職業分類から該当する小分類項目を選択

(例)生産工程従事者>製品製造・加工

処理従事者(金属製品を除く)>食 料品製造従事者

③「傷病名及び傷病部位」⇒該当する傷病名及び傷病部位を選択

(例)傷病名:負傷>切断

 傷病部位:頭部>鼻

 また、「災害発生状況及び原因」の記入事項については、留意事項別に記入できるよう欄が5分割されました(1.どのような場所で、2.どのような作業をしているときに、3.どのような物又は環境に、4.どのような不安全な又は有害な状態があって、5.どのような災害が発生したか)。さらに、「略図(発生時の状況を図示すること。)」については、従前の手書きから、イラスト等の「略図」のデータを添付することになります(手書き等で作成後、携帯電話等で写真を撮ってそのデータを添付することも可)。

◆留意点

厚生労働省は、厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」の活用を推進していますが、電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告を認めるとしています。また、令和7年1月1日からは、次の報告についても電子申請が義務化されます。

総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告、定期健康診断結果報告、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告、有機溶剤等健康診断結果報告、じん肺健康管理実施状況報告

【厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」】

企業の7割がカスハラ対策未対応~東京商工リサーチ調査結果より

東京商工リサーチは、「企業のカスタマーハラスメント」に関する調査結果を公表しました。この調査は8月上旬にインターネットによるアンケートで実施し、5,748社から回答を得て集計されたものです。

◆約2割の企業がカスハラを経験

「貴社では直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことはありますか」という質問に対し、「ある」と回答した企業は19.1%(1,103社)でした。規模別では、資本金1億円以上の大企業の26.1%(567社中、148社)がカスハラを受けており、中小企業は18.4%(5,181社中、955社)でした。取引先や顧客が多い大企業のほうがクレームを受ける機会が多いことがわかります。

職種別では、宿泊業が72.0%(25社中、18社)で最も多く、次いで、飲食業、タクシーやバスなどの道路旅客運送業、サービス業、小売業が上位を占めています。

◆休職や退職が発生した企業も

「カスタマーハラスメントの内容はどのようなものでしたか」という質問に対し、「口調が攻撃的・威圧的だった」が73.1%(1,047社中、766社)で最も多く、次いで、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」、「大きな声を上げられた」、「一方的に話し続けられた」、「過度に謝罪を要求された」が続いています。

また、カスハラを受けたことがある企業のうち、13.5%(1,040社中、141社)がカスハラによって「休職や退職が発生した」と回答しています。

◆カスハラ対策の義務化検討

「カスタマーハラスメントについて、どのような対策を講じていますか」という質問に対し、71.5%(5,651社中、4,041社)が「特に対策は講じていない」と回答しています。一方、対策を講じている企業は、「従業員向けの研修」、「従業員向けの相談窓口の設置」、「カスタマーハラスメントの対応方針(に類するものを含む)の策定」などの対策に取り組んでいます。

政府は、企業へのカスハラ対策の義務化について、労働施策総合推進法の改正を検討しており、来年の通常国会に改正案を提出する予定です。企業は、従業員が安心して働ける職場環境をつくるためにカスハラ対策に取り組むことが必要となります。

【東京商工リサーチ「「企業のカスタマーハラスメント」に関するアンケート調査」】

リテンションと配置・異動管理の重要性

◆リテンションの意味と重要性

「リテンション」とは、企業が優秀な人材を維持・確保するために行う人事施策全般を指します。少子高齢化が進み、人手不足の企業が多いなか、既存の優秀な人材が自社に居続けてくれるための施策は、ますます重要になっています。

リテンションマネジメントは、単なる離職防止策ではなく、従業員の満足度や生産性を高め、企業の競争力を維持・向上させるための戦略的な取組みです。優秀な人材を維持することは、企業の成長に直結するため、企業の重要な課題となっています。

◆不本意な配置・異動がリテンションに与える影響

従業員の意思を無視した配置転換や、家庭事情等を考慮しない一方的な異動は、従業員の不満や不安を増大させ、企業への信頼を損なう恐れがあります。場合によっては退職ドミノにつながり、会社の存続を危うくする可能性もあります。

◆効果的な配置・異動管理の注意点

効果的な配置・異動管理を実施するためには、まず従業員の個々の適性やキャリアプランを尊重することが重要です。従業員の能力や経験、希望を十分に考慮し、適材適所の配置を心がけることが求められます。

また、配置や異動の基準や過程を明確にし、従業員との対話を重視することで、透明性と公平性を確保することができます。さらに、異動後の適応状況を定期的に確認し、必要に応じてサポートを提供することで、従業員が安心して新しい環境に馴染むことができます。従業員の安心感は近年の労務管理における重要事項です。

ただし、このような取組みを行うためには、その基礎として職場の良好な人間関係が必要です。また、異動の基準等を明確化し、多様化する働き方にも対応するために、社内ルール等の見直しが必要になってきているようです。        

(最後までお読みいただき、ありがとうございます。)